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ウジイユタカ

【ユタカの部屋 VOL.50 山口貴利氏】

「アートと思考の自由を広げたい」

村山市在住・現代芸術家/コーチ 山口貴利さんインタビュー


■ 現代アートと伝統工芸のあいだで

宮城県仙台市出身の現代芸術家・山口貴利(やまぐち・たかとし)さん。
大学で美術を学び、卒業後は仙台市の伝統工芸「堤焼(つつみやき)」の窯元に弟子入り。十数年にわたり陶芸職人として修業を積んできました。

「技術や哲学を学ぶうちに、もっと自由な表現をしたいと思うようになりました。」

その思いから、30代でニューヨークへ。3年間の滞在を通じて、日本と海外のアート思考の違いを体感し、現在の作品スタイルの礎を築きました。


■ コロナ禍で見つけた「新しい拠点」──山形・村山へ

コロナ禍で配送業に就いていた頃、山形各地を走る中で村山市と出会います。
古民家を探していた山口さんは、偶然見つけた物件を即決。2021年ごろに移住し、現在のアトリエを構えました。

「山形を走りながら土地の魅力に惹かれました。ここで自分の時間を取り戻そうと思ったんです。」

配送の仕事と並行しながら、少しずつ創作活動を再開。地域の人たちとの出会いをきっかけに、「自分の世界観を作品で伝えたい」と強く感じるようになったといいます。


■ 「見せる」アートへの転換

もともとモノトーンで内面を掘り下げる作品を描いていた山口さん。
しかし、村山に来てからの変化は大きかったと話します。

「以前は自分のためだけに描いていました。でも、『人に見せる』『伝える』ということを意識した瞬間、色が生まれたんです。」

色彩豊かでポップな構成の作品は、空間そのものを明るくし、観る人に前向きな印象を与えます。
キャンバスの枠からあふれ出すようなデザインが、山口さんの新しいスタイルです。


■ アートと思考の共通点──「コーチング」との融合

現在、山口さんはアート活動と並行してビジネスコーチングも学び実践しています。
国際コーチング連盟の基準に沿ったスクールで学び、経営者などを対象にセッションを行っています。

「コーチングもアートと同じ。相手の中にある答えを見つける手伝いなんです。」

「coach」という言葉の語源は「馬車」。
目的地(ゴール)に向かってクライアントと伴走する――そんな思考が、山口さんのアートにも息づいています。


■ 地域とつながるアートの未来

今後は「まちゼミ」でのワークショップ開催や、障がいを持つ方々との交流展など、地域と連動した活動を予定。
制作と対話を組み合わせた新しいアート体験を提案していくそうです。

「作品を通して、自分自身を見つめ直す時間をつくりたい。アートをもっと身近に感じてもらえたらうれしいです。」


■ 編集後記

山口さんの語る「アート」と「コーチング」には、共通して“自分を見つめる力”がある。
それは、誰かの心に灯をともすような穏やかなエネルギーだと感じました。


【プロフィール】

山口貴利(やまぐち・たかとし)
現代芸術家・コーチ。宮城県仙台市出身。伝統工芸「堤焼」の職人として修業後、ニューヨークで3年間活動。現在は山形県村山市を拠点に、作品制作とコーチングを通じて「自由な思考」を広げる活動を行う。

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