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ウジイユタカ

【ユタカの部屋 VOL.49 矢作孝子氏】

ユタカの部屋

今回のゲスト 矢作 孝子 氏 ― 農業・音楽・民泊・ゲストハウス運営 ―


ウジイユタカが個人的に「今この人に話を聞きたい!」という方と語り合うシリーズ「ユタカの部屋」。
今回のゲストは寒河江市出身の矢作孝子さん。44歳で家族とともに農業に飛び込み、その後は音楽やダンスのイベントを企画。さらに近年は民泊・ゲストハウスの運営にも乗り出しています。
「農業」「音楽」「推し活」「宿泊業」――いったい何刀流なのか?その原動力と未来への想いを伺いました。


農業との出会い

ウジイ(以下 ウ): まずはこれまでの経歴を教えてください。

矢作(以下 ヤ): 寒河江市高屋の生まれです。父は航空自衛隊に勤めていましたが、兄が事故で亡くなったことをきっかけに呼び戻され、実家の農業を継ぎました。私が9歳のときに両親が離婚して父子家庭に。その父も私が19歳のときに事故で亡くなり、天涯孤独になってしまいました。

でもその頃に今の夫と出会い、家庭を持つことができたのは大きな救いでした。小さい頃から「家を背負うのは自分だ」という意識が強かった一方で、「農業は大変で自分には向いていない」と思っていました。

最初は飲食業で働きましたが、20歳の時に「安定した仕事を」と考えて生命保険会社に就職しました。24年間、家族やお客様、仲間に支えられて続けられたことには感謝しかありません。

転機は次男が高校生の頃。心を病んでしまった彼を支えるため、祖父母の畑仕事を一緒に始めたのです。その中で少しずつ笑顔を取り戻し「農大に進みたい」と言ってくれました。その言葉に背中を押され、私自身も本気で農業をやろうと決めました。今は次男夫婦や孫も含めた8人家族で、にぎやかに暮らしています。


栽培している作物と一年の流れ

ウ: 現在はどんな作物を育てていますか?

ヤ: 主力はお米(つや姫・雪若丸)です。ほかに蕎麦、アスパラ、冬はハウスでタラの芽を育てています。春はアスパラ、夏は蕎麦、秋は稲刈りと秋蕎麦、冬はタラの芽――季節ごとに収穫があり、一年を通じて収入を安定させられるよう工夫しています。

タラの芽は旅館や飲食店に出荷していますし、蕎麦は加工して村山市のコーヒー店と「蕎麦珈琲」や「そばクッキー」をコラボ。別の店とは「そばのクラフトビール」、お菓子屋さんとは「そば揚げ饅頭」。もちろん蕎麦屋さんにも卸しています。農業は作るだけでなく、人と人をつなぐきっかけになると実感しています。


趣味が街づくりにつながる

ウ: 農業の傍らで音楽活動もされているとか。

ヤ: そうなんです(笑)。2年前の春にカラオケ好きがきっかけで「村山カラオケ愛好会」に参加しました。そこで音楽仲間と出会い、ディスコイベントを企画する友人に背中を押され、なんとDJデビューまで果たしました。

イベントでは昭和歌謡からJ-POPまでかけて、世代を超えて歌ったり踊ったり。盆踊りや社交ダンスも取り入れることで、「こんなに人が集まれる場所があるなんて」と驚かれる方も多いです。音楽は世代を越えて人をつなぐ力があると再確認しました。


民泊・ゲストハウスへの挑戦

ウ: さらに民泊やゲストハウスにも取り組んでいるそうですね。

ヤ: はい。農業をしているからこそ、「食」と「体験」を一緒に楽しんでもらえる宿泊の場を作りたいと思いました。畑で収穫したアスパラやタラの芽を味わってもらったり、蕎麦打ちを体験してもらったり。宿泊者には地元の文化を五感で体験してもらえます。

ウ: 宿泊だけでなく、農業や文化と結びつけるわけですね。

ヤ: そうです。農業だけでも観光だけでも限界がありますが、組み合わせることで魅力は広がります。朝は田んぼを見に行き、昼は収穫体験、夜は温泉でリラックス。さらに芋煮会やBBQ、蔵でのカラオケ大会などで地域の人とも交流してもらう。「暮らすように旅する」体験ができれば、町の印象は大きく変わりますし、「また来たい」と思っていただけるはずです。


「推し活」から生まれた夢

ウ: 推し活が活動につながっている、というお話もあるとか?

ヤ: はい。実はロックバンド「ONE OK ROCK(ワンオク)」が大好きなんです。息子の影響で聴き始めましたが、辛い時期に彼らの音楽に本当に救われました。ライブでは10代から60代まで幅広い世代が集まり、一体となって盛り上がる。その光景に胸を打たれました。

彼らが海外ツアーで「食事に困って蕎麦を食べていた」という話をテレビで見て、「私が蕎麦を打って届けたい!」と本気で思いました(笑)。最初は冗談でも、努力を続ければ夢に近づく。農業や蕎麦打ち、日本文化を大切にしながら活動すれば、音楽とも結びつけられると信じています。もしワンオクのメンバーに私の蕎麦を食べてもらえる日が来たら…農業も音楽も、私の人生すべてがつながる瞬間だと思います。


これからの展望

ウ: 今後の挑戦についてお聞かせください。

ヤ: 農業は命を支え、音楽は心を元気にし、宿泊は人と人をつなぐ入口になる。この三つを組み合わせれば、自然と交流が生まれ、地域全体が明るくなるはずです。まだ小さな活動ですが、「面白そう」「一緒にやってみたい」という仲間が少しずつ増えてきました。

これからは地元の子どもたちにも「自分たちの町の未来を作っていける」と感じてもらえる体験を増やしたいです。収穫祭に音楽ライブを組み合わせたり、体験型イベントを広げたり。民泊を訪れた人がそこに加わってくれることで、外からの風と内からの力が融合し、町全体が活気づくと信じています。

「笑顔があふれる場所をつくりたい」――それが私の一番の目標です。


あとがき

矢作さんの言葉は、農業や観光に携わる人だけでなく、「地域をもっと元気にしたい」と願うすべての人に響きます。小さな挑戦の積み重ねがやがて街を変える力になる。その姿は、私たち一人ひとりが何かに取り組む勇気を与えてくれます。

ぜひ、矢作さんの活動をこれからも応援してください。そして、皆さん自身の「地域を楽しくする一歩」にもつなげてみてはいかがでしょうか。

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