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ウジイユタカ

【ユタカの部屋 vol.73 佐藤勝氏】

ユタカ(以下:ユ)佐藤勝さんよろしくお願いします。

サトウ(以下:サ)佐藤勝です。どうぞよろしくお願いします。

ユ:肩書きは書道家ということでよろしかったですか。

サ:はい今は書道家篆刻家と名乗らせていただいています。

ユ:経歴をお願いします。

サ:1987年に村山市楯岡に生まれました。楯岡高校に入学し、書道部に入りました。そこから書道の楽しさに惚れました。高校を卒業して大東文化大学に入学し、そこで本格的に書道の魅力の深さというか、奥深さを教えてもらいました。大学2年生から、書道の作品に名前を書いて最後に印を押す、その印を篆刻っていうんですけど、篆刻にも目覚めまして、大東文化大学の名誉教授である河野隆先生から約10年間習いました。卒業後も、神奈川の逗子にお住まいの、その河野先生に約10年間通いながら稽古をつけてもらいました。

大学卒業したら高校の書道教員になりまして、1年間は楯岡高校で常勤の書道講師として勤め、その次の年から県の書道教諭として採用試験に受かりまして、最初の赴任したのが寒河江高校です。寒河江高校で5年間勤め、その後は新庄南高校に6年間勤めました。その間卒業生を3回出しています。その次は天童にある、県の教育センターに2年間勤めました。そこで先生たちの研修だったり、生徒指導だったり、そういた先生の研修をする場の仕事に携わらせていただきました。

その間に独立をしたいという気持ちも芽生えて、今年の3月に退職して4月からこのLINKむらやまで書道教室を立ち上げました。

ユ:少し深掘りして聞きたいんですが、高校で書道に出会ったとおっしゃられてたんですが、それまでは例えば小学校のときに書道教室に通ってたとかはないんですか。

サ:特に通った記憶がないですね。学校で放課後ちょっと練習したりとか、そのぐらいの経験ですね。

ユ:書道に出会ったきっかけは、高校の書道部に入ったということでいいですか。

サ:小学校中学校は冬休みに書き初めがあると思いますけど、それがすごく楽しくて。それが部活動であるんだったらやってみようと書道部に入りました。

ユ:今は違うかと思いますが、どうしても当時高校の書道部というのは女子というイメージがあるんですが、入部したとき、周りに男子生徒はいましたか。

男子生徒は誰もおらず、顧問の先生が男性の先生で、その先生と一緒に頑張ってきた感じですね。

ユ:大東文化大学で本格的に書道を始められたということなんですが、学部とか専攻で書道を選んだということですか。

サ:大東文化大学文学部中国学科で学びました。大東文化大学に書道学科もあるんですが、文化・歴史・語学、そういったものを全て学べることが魅力だったので、中国学科に入って、書道も一緒に学んだっていう形です。

ユ:中国の歴史や文化についても興味があったという感じですか。

サ:書道が中心にあってそれに付随する歴史や文化ですね、あと文字学。そういうとこですね。

ユ:そこから10年間先生について習ったということは、10年間大学のある関東方面で過ごしたということですか。

サ:大学卒業後は山形に戻ってきて教員生活をしながら、月に1回稽古のために新幹線に乗って逗子まで行って稽古をしていただいてそのまま帰るっていうのを10年間続けました。

ユ:こちらから書道の作品を持っていって、添削してもらうっていう形になりますか。

サ:はい、特に先生からの指示はなくて、作った作品や自分の苦手なものを練習したもの、そういったものを持って行って先生からアドバイスをしていただいたり手本を書いてもらったりていう稽古です。私だけじゃなくて、いろんなお弟子さんがいるので、そういった方々から学ぶ機会もいただいて、とても充実していました。昼の3時から夜の9時ぐらいまでずっとお邪魔して勉強してた、そんな感じですね。

ユ:そしてさらに書道を極めようということで、先生を辞めてLINKで書道教室を開いたということでよろしかったですか。

サ:もう一つ大きな理由がありまして私自身も書道を極めたいっていうのはあるんですが、書道の楽しさ、魅力を広く伝えていきたいなと。どうしても学校現場だと生徒、学生という限られた人数になりますから。これからも人数減っていきますし、本当に限られた場でしかないので。だったらもう一般の人や小学生、いろんな方々に教えられる書道教室をということで独立しました。

ユ:そのように書道教室を開いた佐藤さんがどっぷりはまっている書道の魅力について教えて下さい。

サ:はい。書道の魅力といっても、もう一言で語り切れないんです。

まず一つは墨を磨る。その体験がとても楽しいというか、奥深いので、それをここでは大切にしています。

プロが使うような硯や墨も準備しておりますのでそれを体験してもらうっていうのはなかなか日常生活ではできないと思います。これはやっぱり書道の一つの大きな魅力なのかなと思っています。

ユ:墨というと、墨汁をチューって垂らす、そんなイメージしかないんですけど、墨を磨るっていうのはどういうことですか。

サ:本来の墨というのは、固形墨です。よく書道バックの中にちっちゃく入ってて、墨を硯で水で溶かしながらこする感じですね。これも何十種類も取り揃えておりますので、経験してもらっています。いろいろ違うんですよ。香りも。

ユ:色も違うんですか。

サ:全然違います。それを体験してもらうのも一つの魅力かなと思います。私自身もすごく楽しんでいます。

ユ:墨を磨る魅力の他にはどんな魅力がありますか。

サ:筆ですね。普通に教室で使ってるような筆もあるんですけどいろんな動物の毛の筆があるんです。一番ビジュアル的に派手なのはこれ、孔雀の羽の筆ですね。

とても鮮やかで派手な筆です。同じ鳥の羽でいうと鴨。これもやっぱりなかなか市販されてないです。

動物系では黒タヌキ。こういう筆も使って書道教室の生徒さんに書いてもらってます。それとちょっと残酷ですけども、うさぎの髭ですね。二、三本しかしか生えてないうさぎの髭を束ねて筆にしてるんです。あとはマングース。そしてこれはまだ使ってないんですけども、私の息子の髪の毛です。こういったいろんな毛の筆があるっていうのも、表現する上では道具の幅が広がるので、魅力の一つになりますね。

ユ:やっぱりそれぞれ書き味は違うんですかね。

サ:全然違いますね。

墨も違えば、筆も違う。その組み合わせで何百何千通りが出来上がるんです。あと硯も違いますし、紙も違います。これは奥深いですね。ずっと研究しています。

ユ:書道という「道」がついているということは、流派とかはあるんですか。

サ:もちろんあります。私は大東文化大学で河野隆先生に教わりまして、10年間学びました。もうお亡くなりになった方です。その後もその会派に入って作品を出品したり、展覧会に出したりしております。そういった先生毎に会派があります。

ユ:よく茶道だと、表千家裏千家とか、あと華道で言うと、池坊とかいろいろありますけども大きく分けると何派ぐらいあるんですか。

サ:書道の展覧会で言うと一番上が日展と言われるもの。その下に読売新聞社主催の読売書道展、毎日新聞社主催の毎日書道展という二大書道展があるんです。どちらかに所属しているので、あなたは読売派?毎日派?っていうと表現が全然違う。その中、例えば読売新聞の中でもがいろいろ会派がある、そんな感じですかね。

ユ:ふと思ったんですが、最近高校生で書道パフォーマンスやる子多いじゃないですか。あれは書道っていっていいんですか。

サ:書道作品ですねもちろん。私が思う、あの書道パフォーマンスはパフォーマンスなのでショー、演技の部類です。やっぱり書く姿を見せたり、ダンスだったり、そういう書いてるところを見て楽しんでもらうっていうのが一つ目の楽しめるところです。そして出来上がった作品を見てもらうことの二つの大きな楽しみ方あるかなと思います。ただ作品は、あくまでそのときの瞬間の具現化したものですので、長期間展示したり、するようなものじゃなくてですね、一瞬一瞬で出来上がった作品ということで、パフォーマンスの表現の一つなのかなとは私は思っています。

ユ:やはり作品としては、一つの作品は1人で完結するっていうのが基本ですか。書道パフォーマンスは共同制作ですが。

サ:私達が書くような作品は、最初から最後まで自分で作り上げますね。

ユ:今度篆刻の話ですが、全くわからない人のために、篆刻って何なのかっていうところから教えていただいていいでしょうか?

サ:篆刻っていうのは篆書を刻すから「篆刻」っていうんですが、篆書っていう書体があるんですね。篆書というのは書道でいうと、こういう歴史があって、篆書体があって隷書体、草書体、行書体、楷書体とあって、時代が移り変わって字も進化してきてるんです。大体ここら辺の文字を題材にして、石だったり木に刻す。それを総じて篆刻と言われております。そういう表現の仕方ですね。

ユ:ハンコを作ることとはまた違うんですね。

サ:ハンコのことを篆刻と総じて言いますね。

一番最初の成り立ちとしては、秦の始皇帝が、家来に自分の身分を示すために鋳造した印を持たせたんですね。今で言うパスポート代わりみたいな。それが篆刻の起源になりますね。今では、自分の名前だったりペンネームを彫って、それを作品として楽しむという風に少し用途が変わってきてる感じです。大体2000年ぐらい経ってます。

ユ:よく見かけるのは書道ですが、あと日本画で落款という形で押されることもよく目にします。それも同じと思っていいんでしょうか?

サ:同じく落款印と言いますね。落款っていうのは落成鑑識といって最後に自分の書いた署名を残すということで、自分の証明ということで印を押すっていう意味で、日本画でも印を押します。

ユ:篆刻もいろんなやり方があるんですか。

サ:あれは奥深いですよ。中国でもありますし、台湾、韓国、そして日本でも。それぞれやっぱり表現の仕方、掘り方も違いますし、日本独自の文化もあります。彫り方、作品の仕立て方全然違いますね。それも面白さなんですけどね。

ユ:そしたらざっくりで結構ですので、篆刻の彫り方について順を追ってちょっとご説明いただきたいんですけどもいいですか。

サ:まず最初に印を彫るための線分検事といって、ここは何の文字を彫るかというのを決めた後に、文字の辞書を調べて、それを組み合わせてどういう印を彫るかという原稿を作ります。そのことを印行というんですけど、印行が出来上がったら、彫る石を整えていきます。印面を耐水ペーパーでこすって平らにして、その上に先ほど出来上がった原稿を写していくんです。写し方も直接筆で書いたり、トレーシングペーパーで写したり、様々なやり方があります。石に原稿を写し終えたら、印刀と言われる刀ですね、これ両刃の方なんですが、それでざっくりざっくりと彫っていきます。

ここで彫り方のポイントとしてあるのが、石なので、もちろん彫っていくと欠けたり、傷ついたりします。はんこ屋さんの判子とは違うんですね。ハンコ屋さんの判子は綺麗に整えて、まとめて彫りますけども、篆刻は、書道でいうかすれだったりにじみのようだったり、線が太くなったり細くなったりしてもいいんです。そういったところの表現には幅がありますので。彫り終えたら最後にこの朱肉ですね。専門用語で言うと印泥と言います。この印泥をつけて紙に押して完成となります。ざっとですが、こんな作り方でやっております。

ユ:石の種類もいろいろあったりするんですか。

サ:石の種類もいろんなのがあります。こういうふうに上に柱(ちゅう)といって、竜とか、牛、金魚、こういうのも職人さんが掘って、そういう印材が売ってるんです。それぞれ産地によって、名称があるんです。だけども細かすぎてなかなか難しいですね。

主に巴林石だったり青田石だったり。そういったものを使ってますね。

ユ:これで朱肉をつけて、書道の作品の一番最後にそれを押すと。自分の名前を書いて判子を押して完成という。

サ:そうですね、大体自分の名前だったりペンネーム、雅号っていうんですけどそういうのを入れて、最後に印を押すっていうのが一般的な使われ方ですね。

ユ:書道って書く楽しみもあると思うんですが、見る楽しみもあると思うんです。書道展で見る楽しみ、どういったポイントで見るともっと楽しめるよというような、ちょっとしたヒントをいただけるとありがたいです。

サ:書道展ではいろんな作品が並んでいると思います。初心者の方は、なんていう文字を書いているのか。文字を読もうとしたり文章を読もうとしたりするんですけど、それで読めなくて難しい、私にはできないっていうふうに諦めちゃう人がいると思うんです。

もちろん読んでいただくのも理解するためには大事なんですけど、まず最初に見たときの字の形だったり、格好だったり、にじみとかかすれ、人それぞれ違うので見た目っていうところから楽しむのが一つ。

また、墨色だったり、どういう印の形だったり、あとはそうですね作品だけじゃなくてその周りの額縁、体裁だったり。そういう見た目から、自分の好みというか、これちょっと好きかも、これだったら家に飾ってみようかなとか、そういう見方もあるのかなと思っています。私もそこはすごく大事にしていて、書道になじみのない人でも楽しめるような作品を作っております。

ユ:では最後に、書道教室のご紹介をお願いします。

サ:ここの書道教室の名前は日好(にっこう)書道教室といいます。日好とはこの日日是好日という禅の言葉からとりました。毎日良い日が続きますようにっていう意味合いを込めて命名しました。この書道教室は、段とか級を取るような教室じゃなくて学校の教科書を使って広く浅く学んでいきます。なぜ教科書を使うかっていうと、いろんな表現の仕方が載っているんです。小学生の教科書は書写なんですけど、高校の教科書なになると、いろんな書体の手本があったり、古典作品も学べたり、仮名の作品だったり、漢字仮名交じりの書といって自分の好きな詩だったり、歌詞を書いたり、そして篆刻だったり、あとはペン字ですね。

あとはがきの書き方、筆ペンを使っての水引の書き方、履歴書の書き方などなど、いろんな文字を使った表現の仕方っていうのが教科書にあるので、その表現の楽しむための書道教室というコンセプトで、ここを作りました。

ユ:生徒さんの年齢は何歳ぐらいから上は何歳ぐらいですか。

サ:一番小さい子たちは小学校3年生です。習字、書写の授業を習いたての子供たちから高校生もおりますし、あとは大人の方、大学卒業したての方もいたり、仕事を定年退職された方もいたり、あとは学校の先生、元同僚だったり。あとは日本画を書かれる作家さんもいたり、いろんな方が来ていただいてますね。

ユ:何曜日に教室をやってるとか、そういうところもご紹介いただければ。

サ:水曜日、木曜日、金曜日、土曜日です。午前10時からと12時半からと15時からと3コマやっております。90分一コマでやっております。基本的には月三回来ていただいているんですけども、仕事の方だったり、忙しい方もいらっしゃるので、月1回で来ていただいてる方も多くいます。

特徴としては手ぶらで来ていただいております。特に持ち物はないです。筆、硯、墨、紙、私がメンテナンスしているものを貸し出しますので、同じ道具をずっと使うというよりは、いろんな道具を使って楽しんでもらうっていうようなコンセプトです。ご覧の通り狭い教室ですので、3人とか4人ぐらいで楽しくサロン的な感じでワイワイ楽しみながら、ゆっくり時間を過ごせてもらう書道教室です。

ユ:ありがとうございました。

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