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ウジイユタカ

ユタカの部屋VOL.81 小関一成氏

Nature photography これを日本語で言うと何てなりますか? 

 

自然写真という日本語になりますね。

 

自己紹介を含めて自然写真を撮り始めたきっかけを教えてください。

 

24歳で父に弟子入りという形で今の写真館で働き始めたんです。元々ヘラブナ釣りとかが好きだったんですが、父がある時フライフィッシングの道具を買ってきたんですね。結構難しい釣りなんで父は諦めたんですけども、それを僕が譲り受けてフライフィッシングを始めました。そして川歩きと言うか自然を歩くようになったんですね。その時は、僕はカメラも持たず釣りのために歩くだけでした。実はフライフィッシングではずっと川を歩いて行くんです。川歩きというのは普通の人はしたことがないと思うんですが、歩いて見ているうちにやっぱり川は綺麗だなと。フライフィッシングというのは釣りの対象が川魚で、春の雪解けから秋まで刻々と週ごとに季節が変わっていって、それが分からないと「魚が何を食べているか」とか「どのあたりを泳ぐか」とか行動とかわからないので自然とそれを知るようになって。そしていつのまにかその魅力にとりつかれて10年ぐらい経っていました。そして釣りのブログを始めたんです。そのための写真を、まずはコンデジで撮影してブログにアップするということを始めました。ブログでは自然と釣りの魅力半々ですけど、それを伝えたいなとそういうのがもともとのきっかけですね。

雪解けの水辺

 

釣りの魅力から更に広がって、自然の魅力というものを写真に撮りたいなと変わっていった経緯はどんな感じですか?

 

だんだん僕にとって釣りに行く理由って、ただ魚を釣るのが面白いっていうだけだけではなくなっていったんです。いつのまにか自然の中で自然を感じながら過ごすということがなんかとても心地よくて、そういった部分が次第に大きくなっていったというか、そういうのがありますね。今はもうほぼ釣りがゼロになりました。その代わりカメラを持って出かけるようになったんです。川歩きもたまにはするんですけど、前は釣りの道具を結構持って出かけたんですが、それが今はカメラ道具一式という形になりました。最初に自然写真を撮るようになったのは、今まで釣りで行っていた場所とかで、途中で歩きながら「あ、あそこいいな!」と思った風景だとか、釣りをしながら歩いたところの延長にあるんです。 

 

釣り道具を持たずに山に行こうと思った思ったのはいつぐらいですか?

 

2017年の半ばぐらいだったですね。写真館をやっていてやっぱり自然写真とかそっちの方に傾倒してしまったらはぐれ者というかやっぱり違う世界だな、というのを自分では実感していたんです。やっぱり写真館も頑張らなければいけないし。多分僕の中でもそっちは遊びの写真だっていうイメージが拭い去れなかったんです。でもそれをとことん追求してみたいなという気持ちが芽生えてきまして。だから仕事ではないですけど、自分の中で趣味っていう気持ちを持ち続けていると甘えが出るので二足の草鞋を履くつもりでやろうかなと思いました。そこから本格的に撮るようになりましたね。最初は釣りもたまには行こうかなと思っていたんですけど、自然の中で見ている景色だったら朝とか夜とかから行って、もっといい風景を見たいと思って、釣りをしなくてもいいなと思うように移り変わっていきました。もう今はほぼ釣りには行っていないという状況になりました。

 

ネイチャーフォトの魅力って何ですか?

 

いつも発見があるということですかね。感動の連続というか。朝日を待っている時とか夕暮れとか、誰かとつるんで行くということは僕はあまり多くないんです。あと人気スポットとかも多くないので。一人でずっと見ていたりしながら、時間によって変わる光の当たり方とか色合いの感動が一番大きかったですね。朝の光であったり夕暮れの光だったりとか、なるほどこうすればこう綺麗に撮れるんだというのを教えてもらったことが浮かんできて、自然に光の美しさも理解できるようになったのかなと思います。理解できるようになると写真館で撮る写真の光にも活かせるようになったと思います。

夜明けの山並み

 

山には一人で行くんですか?熊とか蛇とか怖くないですか?

 

ほぼ一人ですね。元々釣りをやっていた時から普通にあったところなので熊には遭ったことありますよ。僕が行くところは蛇の方が少ないですね。もともとわかるわけじゃないですけど多分一般の方よりは「多分ここいるな」っていう危ない場所はなんとなく予測がつくので。そういうところには歌を歌って行ったりとか。熊鈴とか一般的なくまクマ対策的なことはやっています。自然は基本的にどこも一緒じゃなくて、クマが好きな場所とか通り道とかこの辺の地域は出やすいとかもちろんあるので。僕はあまり一気に奥に行かないんです。ビビりなんですよ。ちょっとずつ入ってここは大丈夫だなって見ながら、だんだん分け入っていくというか、そういうのを徐々にやっていくというのが、それもまた楽しいのかなと思っています。自然を知りながらここだったらこの季節こういう植物が生えるんだとか、ここはちょっと季節が進むのが早いなとかわかってくるんです。たぶん山形県内だと一番早く春が始まるのが庄内。それの一週間遅れくらいで山形市天童市。その後にその一週間遅れで東根村山。そして米沢が始まって新庄とかがもうちょっと遅いと。地域でも違って、あーなるほどなあと。それに合わせて釣り場所を選んでいたんで、その時の知識が自然とあって、今の季節だったらここの場所がちょっといいんじゃないかなと予測を立てながら行ってみたりとか 、それ自体を楽しんでるところがありますね。

 

撮影に行く時から帰ってくる時までの大体の流れを教えてください。

 

蔵王のお釜によく行くんですけど日の出が5時だとするとカメラは前日にバッグに用意しておきます。お釜は車を止めればそれほど歩かない距離で行けるので、カメラ以外あまり物は持たずにいけます。朝3時頃に出て到着が4時前。そして準備して4時位になりますね。お釜の一番手前の駐車場からすぐ着くので、4時ちょっと過ぎぐらいに撮影ポイントに着きます。その時はまだちょっと暗いですけど、朝日を待つのであれば日の出30分前ぐらいからはその場にいたいなと思っています。そこから空の色が徐々に変わっていって、そして日の出までそれを撮って。日が昇ってから少し歩いて軽く撮って、そうすると7時ぐらいには終わって車に戻ってきます。下山して8時、そして普段の仕事を始めます。

もし休日であれば宮城の方に下りたり、そんなことも考えます。宮城の方におりて白石の方とか回ってちょっと川を歩いてみたりとかして、少し撮って夕方までぶらぶらして、いい景色があったら撮るんですけど、どちらかというと今後も来るわけだからここにまた違う時間来たらいいのかなとかそういうインプットをしていくのがの半分ですね。あと夕方例えば日の沈む場所はどこかなと考えると、蔵王の上にもう1回戻るか、遠回りして秋保を通って関山から抜けて、奥新川とか好きなんでそのあたりで夕日と電車とか撮ったりして夜に戻る。休日ならそんなところまで行きますかね。

 

撮影に持っていく機材を教えてください。

 

まずカメラですね。そしてレンズを3〜4本。カメラは35ミリのフルサイズのデジタルカメラです。レンズは全く知らない場所に行っても対応できるように超広角レンズ、標準ズーム、望遠ズームであと好きな単焦点レンズ3本ぐらい。中望遠と広角35 mm。 あとマクロとかですね。そして三脚とフィルター各種。 ND フィルター結構使うんですよ。そのぐらいですかね。山歩きの ストックとかは持たないですね。できるだけ物を持たないようにしたいんで。まだ若いし。あと非常食とかは持って行きます。パンとかそのぐらいですね。 もし山を登って本格的な山岳写真ということになれば、やはりそれなりの装備が必要だと思います。遭難してもいいぐらいの。そういう場合はカメラ主体から登山主体の荷物に変えます。そういう場合はレンズを3本ぐらいに減らしますね。そして水分は本当に多めに持って行きます。1日歩くと500mlのペットボトルを3本ぐらい持っていって、タオルと着替えと、あとライトとか。しっかりした防寒対策とか雨具とかそういう基本的な登山ができるような装備を持って行きます。

 

夜明けの蔵王御釜

 

今度はコンテストの話になりますが、こういうコンテストがあるよっていう紹介からお願いします。

 

僕は基本的に海外のコンテストに出しているんです。海外のコンテストはほとんどがエントリーするのは有料です。思ったよりかかりますね。日本のコンテストだと無料のものが多いんですが、やはり僕は海外のものに出したいと思ってます。写真愛好家というよりも目標や目的を持っている方々がよく出品するコンテストだと思っています。プロフェッショナル部門とかそういう部門があるので。それでもやっぱり知名度があって、入賞するとその入賞者にスポットライトが当たるようなコンテストに応募します。

 

そのコンテストの情報は最初何で得ることが多いですか?

 

ネットで調べると海外有名コンテストの記事があるんですよ。最近は SNS とかで拡散するのでそういう情報はさらに増えてると思うんですけど、そういうところから何件か出していって、そして入賞すると他のコンテストからお誘いが来るということもあります。それで知ったりとか。海外記事とかでこれ良さそうだなと少しずつ発見しながら出しています。 今年出す予定のコンテストを一覧にしてるんですけど、15ぐらいありますね。締め切りに追われる毎日です。それに全て本気で取り組むと結構大変なんです。でもそれが自分にとってプラスになったのかなあというふうには思っていますけど。

 

そのコンテストの中で自分としてはこのコンテストの賞を取りたいという風に思ってるものはありますか?

 

自然写真の世界最高峰が二つあってそのひとつが「ワイルドライフフォトグラファーオブザイヤー」というコンテストです。イギリスのロンドン自然史博物館と BBC がやっていて、今年で57回目です。そのコンテストにはナショナルジオグラフィックのフォトグラファーさんが続々と名を連ねるような、そういうコンテストです。もうひとつがネイチャーズベストフォトグラフィーというコンテストなんですけど、元々同じ名前の雑誌とスミソニアン博物館がやっているのがそのコンテストです。あとソニーのコンテストが世界一の応募者数を誇るコンテストです。 組写真がプロフェッショナル部門で単写真が一般部門なんですが全部で40万点ぐらいの写真が集まるそうです。その中でフォトグラファーオブザイヤーとして一人が選ばれます。全部で10部門ぐらいあるんですが、それぞれの中で1位2位3位。 あとその候補者リストに入った人たちとかに分かれています。

ワイルドライフフォトグラファーオブザイヤーとネイチャーズベストフォトグラフィーはそれぞれ5万点ぐらいです。でもレベルがちょっと違うかもしれませんが。

白川湖

 

最近受賞した賞について教えてください

 

トーキョー・インターナショナルフォトグラフィーアワードとモスクワ・インターナショナルフォトグラフィーアワードでゴールドを受賞しました。 トーキョー・インターナショナルフォトグラフィーアワードというのはもともと有名なインターナショナルフォトグラフィーアワードのスピンオフという形で各国で始めた、それの東京版とモスクワ版です。そのコンテストで上位入賞をいただきました。それで東京やモスクワで上位入賞者の展示会をやります。さっき言っていたワイルドライフフォトグラファーオブザイヤーやネイチャーズベストフォトグラフィーだったら上位入賞すると表彰式に招待というのもあるんですが。

 

もしそのコンテストに入賞した暁には私は後見人として一緒についていきますよ。

 

ここはもう夢といかそういうレベルなんですね。自然写真家憧れのアワードとでもいいますか。

 

アマチュア写真家さんに向けて春から初夏にかけてここがいいですよというお勧めの場所があったら教えてください。

 

白川湖って言いたいですね。もう今は有名ですごく人が増えてるんですけど、そこが分かりやすいと思います。飯豊町の白川湖ですね。元々ここは川の水が流れ込む場所でそこの川に釣りをしに行っていたんです。そういうつながりがあって僕の中ではここいいなぁと思っていました。霧が出やすいんですここは。朝霧というか川霧でもあるんですけど、雪解け水でダムの一番上なんで、水没林があるんです。水に木が反射して幻想的な風景になるんですよ。実際に見ていてもすごく綺麗だなーって思うはずです。日の出頃がお勧めですが実は超寒いです。でも寒いからこそ綺麗な風景が見れるっていうのはもちろんあると思います。実際に写真を撮らなくても一度は見ておいて損はない景色だと思いますよ。

 

 

最後に今後の目標を教えてください。

 

実はコンテスト自体が目標ではなくてコンテストに出す理由ってあるんですけど…僕の写真と山形の風景と、自然を含めてそれが誰かに伝わる場所があればいいなと思っています。受賞して、それが上位に行けば行くほど世界中の人が見る可能性があるので、それのためにやっているというのが正直なところです。一番上の賞を貰うというよりは多くの人に知ってもらいたいというか、そういうのを大事に思っています。将来的にやっぱり僕というより僕の写真の知名度を上げて販売したいとは思っています。コンテンポラリーアートと言うかそちらの方向で売りたいと思っているんですが、その道ってなかなか日本だと厳しい部分なんですよ。日本人はコレクターさんがあまりいないんで。それもあって海外のコンテストに出しているんですけど、それを今の写真館をやりながら自然写真の方はアートとしての価値をわかってもらえるようななればいいなと、そういうところはあります。長い目で見てやっていきたいと思います。

ここ最近の写真界隈のネタなんですが、写真を見て風景がいいから風景を撮りたいといって写真の道具をそろえたりする人が多くなってきました。それだと結構行き詰まるところがあって。写真のために歩くみたいな。僕は逆で元々カメラを持たずに自然に入って行ったんですが、写真を撮るにしても、いろいろ感じながら風景でも街中でもいいなあと思ったものを撮るんで。いろんなシーンを探して欲しいなあと思っています 。

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