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ウジイユタカ

ユタカの部屋 VOL.80 大山芙由美さん

ウジイ:自己紹介を兼ねて経歴を教えてください。

 

大山:もうすぐ34歳になります。村山市出身です。山形の高校〜東北芸術工科大学卒業後、仙台の会社に7年勤めていました。母が倒れたきっかけで、村山市の地域おこし協力隊に応募しました。そして約5年ぐらい前に協力隊として村山に戻ってきました。

幼い頃から母が七宝焼の師範としてずっと教えていて、その背中を見て今現在七宝焼をしています。

 

ウジイ:地域おこし協力隊として5年間活動してきた内容を簡単に教えてください。

 

大山:地域おこし協力隊というのは総務省の事業で、都会から地方に来てもらって、そこに住んで仕事をすることによって地域の活性化のお手伝いをするというものです。約5年前に 地域おこし協力隊として U ターンで村山市に戻ってきました。私が協力隊でやっていた仕事というのは、商店街の活性化です。楯岡商店街生まれで商店街で育ったので。幼い頃はすごく活気があったんですけど、Uターンで戻ってきた時にやっぱり少し元気がないなと思ったので、まずは商店街の活性化に少しでも協力できたらとということでイベントを企画しました。多くの人を商店街に呼んでハロウィンツアーをしたり、お店に特化したワークショップとかカフェをすることによってお客さんを連れてきて、そこのお店の人達と友達になってもらおうというようなことを約3年間行ってきました。3年間の間に地域の方といろいろご縁があって仲良くなって、そして現在があります。協力隊がきっかけで「この家を使ってほしい」という声があったので、民泊工房Fuuとして使わせていただくことになって、今ここで仕事をしています。

ウジイ:地域おこし協力隊というのは何年間の期限なんですか。

 

大山:1年ごとに更新で3年間の期限です。3年後はできればその場所で根付いてほしいという思いもあるようです。

商店街生まれではありますが3年間は近くのアパートを借りて住んでいました。協力隊の制度の一つとして家が借りれるということがあったのと、私が仙台から帰ってくる時に一人暮らしの道具とかも全て持っていたので、実家には戻らず近くのアパートで3年間過ごしました。 

3年間の具体的な活動としては、実家が本屋だったのでまずは実家を使って本屋でブックカフェ。毛糸屋さんで毛糸カフェ。写真屋さんで写真の撮り方を教えてもらうというカフェ。あとは銀行ツアーをやったりお米屋さんでもち粉クレープを作ったり、魚屋さんで魚の切り方を子供たちに教えるという教室、また電気屋さんでイライラ棒という理科の実験のようなことをしたりとか。色んな所でやりました。一人ではできないことなので「こどもぐみ」っていう村山で活動している団体がさんがあるんですが、その方たちと一緒に活動してきました。そのこどもぐみというのは、市外から来たお母さん達が作った団体なんです。外からくるとやっぱり友達がいないとかお店が分からないとか、そう感じる人が多いんですね。そういうお母さんたちと商店街をつなぐような活動を元々してたのがこどもぐみでした。私もやりたいことが似ていたので、こどもぐみさんに声をかけて一緒にやりました。国や自治体の補助金を使ってこのイベントをやったんです 。補助金申請の時に知ったんですが、そういうような経験を1年以上やった人ではないと補助事業は出来ないということで、私はまだ一年未満だったのですが、こどもぐみさんは元々そういうのをやっていた団体だったので、そこに声をかけて補助金制度を使って6〜7人ぐらいでやりました。

元々商店街の方というのはずっとそこで根付いていろんなことを行ってきた方々で、そこに対して私が「こういう風にやりたい」とか「こういう風にしたらどうだ」とか提案するのはおこがましいと思ったんです。なので、ちょっとでも新しいきっかけ作りができればというくらいの気持ちでいたんですが、やりたいことをお話しして、お客さんを連れてくることによってお店の方が自発的にいろんなことを考えてくれればいいなと思ったんです。それをメインにやってきて、最近若い人とか親子連れとか増えたような気がするという声が聞こえてきたことと、またお店の方でちょっとこういうのを置いてみたという試みを始めた方も少し出てきたのはちょっと成果があった部分なのかなと思いました。

その他の活動は情報発信ですね。私自身の経験で、 U ターンで戻ってきた時に村山市のことは大抵知っていると思っていたんですね。元々の地元だし。知ってると思って帰ってきたんですけど知らないことが多くて。例えば甑葉プラザもほとんど行ったことがなかったし、こめやかたさんとかいろんな若い方の面白い活動というのも全然私は知らなかったんです。すごくそれがショックで、せっかく地元にいるのに地元がつまらないと思われるのが一番つらいなと思っていたので、私の同世代とかもっと若い世代に知ってもらえる手段としてどうすればいいんだろうと思って、 Facebook Instagram Twitter などで情報を発信できればなとと思って、イベントとかそういうのは全て SNS で発信してきました。同期の協力隊員さんは手書きで駅にポスターを貼ったりとか。そういう昔ながらの手段と現代の SNS というのを組み合わせて情報発信をしてきました。

 

ウジイ:協力隊で 活動している3年間の間にこの民泊工房を考えていたんですか?

 

大山:民泊は全く思っていなかったです。人を宿泊させるというのには全く興味がなくて。「おもてなし」はもともと好きだったんですけどね。

大学卒業しても七宝はいろんな人に教えたりしていたのでどこかで自分の工房を作りたいなと思っていたんですよ。村山で工房を作ることによって、情報発信の場としても周りの方にも恩返しができるかなと思って。そういう工房が欲しいなと思っていました。じゃあどうすればいいんだろう、拠点もないし、それでお金が稼げる保証もないしと思ってまず建物を探そうと思ったんです。工房が欲しいんだということを周りの人に相談しました。たまたま知り合いの不動産の方からここの家を紹介されました。元々おばあちゃんが一人で住んでいてこの家を手放すということで村山市で活動している人に譲りたいと。実際そのおばあちゃんとお会いして家を見た時に、とても広かったんですね。まずは工房が出来るなと思って。その後に色々見てたら2階には宿泊もできると思って、初めてそこで民泊しようと思ったんです。 何で民泊をしようと思ったかというと、七宝焼きを色んな所に教えに行った時にやっぱり時間が限られている、持っていく材料も限られている、なのですべてを教えられない、そうなると教わる方も満足しているか不安だ、そう思ってずっとワークショップをやってきたんです。そんな時に宿泊スペースがもしあればって考えました。合宿所ですよね。もう寝ないでお互い七宝焼ができると。ここでワークショップをして2階に宿泊部屋を設けることによってお互いが思う存分七宝に集中できる場所として使えるんじゃないか、そう思った時に初めて、じゃあ民泊もしようと思ったんですね。なので本当にここは七宝焼ありきでの民泊です。 この部屋に飾ってある作品は宿泊して七宝焼きを体験していった方々のものなんですね。一昨年の4月から住み始めました。その前の年の10月に家を譲っていただいたんですけれど、そこからちょくちょく通ってリノベーションして床を張ったりとか壁を塗ったりとか、あまり大きい改装はしたくなかったんですが、雰囲気を壊さずにこの場所を工房と宿泊部屋にできればと思っています。

やはり金銭的には厳しいので、例えば6月だったらじゅんさいのお手伝いとかバラのお手伝いとか農作物のお手伝いとかコワーキングスペースだったりとか、仕事はひとつじゃないなと思ってるので、色んな所で仕事を何個か持ってその仕事を持つことによってその先でまた七宝の仕事が生まれたりするのでそうやって今は生活しています。

ウジイ:七宝焼きの魅力について熱く語ってください。

 

大山:七宝焼は簡単に言うと銅とか銀とか金の上にガラス質の粉、釉薬というんですけど、それを乗せて800°とか900°で焼いたものなんです。魅力としては毎回毎回が「出会い」なんです。 こういう組み合わせでこういう色が出るというのは分かるんですけど、たまに金属の化学変化で違う色が出たりするんです。色の変化というのがひとつの魅力です。何年も行ってきたけど新しい色の変化が出たりとか、組み合わせることによって可能性は無限なんですね。焼いて重ねて焼いて重ねてを繰り返すとまた違う色が出たりする。本当に私のなかで同じ作品は作れないんですよ。この金属一つをとっても成分が違うので、色を一色のせることによってその色の厚さ、焼く温度や時間によって色は微妙に異なるんです。本当に毎回毎回一個一個作る毎に発見ばかりです。あと、同じ作品を作れないっていうのもひとつの魅力で、3人が同じ色を使って同じ枠を使ったとしても全員違うんです。それも魅力です。小学生に教えたりすると本当に大胆な色の使い方をする子供もいるので、こっちが教えられることも多いです。大人の方やっぱり綺麗にとか左右対称にとかそういう気持ちがあるんですけど、お子さんはそういうのは完全無視してやりたい放題やるので、あーこの色合いがいいなとか、教えていても自分が勉強させられるような。なので本当に一生勉強ですね。可能性は無限だし全然やれてないことも多いのでワクワクしかないですね。今まではアクセサリーをメインにやってきたんですけど、今後は身に付けるものというよりは生活としても使えるものもやっていきたいなと思っていて、例えばこういうお皿とか小物入れとか、今作ろうとしているのは時計ですね。あとはペンダントライトとか。

七宝焼きってやっぱりアクセサリーっていうイメージが大きいんですが、それだけではなく例えば看板なんかもできるんですよ。雨に濡れても紫外線に当たっても色は変わらないんです。もっともっと形を変えて色を変えて作れるというのが七宝焼きの魅力かなと思っています。なのでこれからはもっと可能性を広げて、アクセサリーにとらわれずに自分がやれることを広げることによって、お客さんも体験できる可能性は広がるのでもっともっと楽しいこと、いろんなことをやっていきたいと思っています。

 

ウジイ:七宝焼きは小さい物っていうイメージがあるんですが大きいのはどのぐらいの大きさのあるんですか?

大山:この前まなびやテラスでガラス作家さんと展示会をやったんですがそこに展示したものがあって…上野美術館でアジアアート展というのがあって秀作賞を取った時の作品なんですけど、これは十二支というのをテーマに作ったんですね。実家に畳2畳ぐらいの電気炉があるのでそれで焼いて。これは一個一個は小さいんですけど、組み合わせると10号くらいですね。十二支というのはどういうものなんだろうというものを勉強して噛み砕いて整理をして、それによって「輪廻」という作品なんですけどこういうものができました。アクセサリーって道具があれば誰でもできるんですよ。大きいものを作るというのが私の中では作家活動だと思っているんです。 両方の路線で、作家でありながらアクセサリー作りとかを教える講師の両方でやっていきたいなと思っています。どんどん大きい作品をこれからも作っていければと思っています。

ウジイ:民泊というものの楽しさや難しさについて感じていることを教えてください。

大山:民泊をやるにあたって知識はゼロだったので逆に不安はなかったです。とにかくやってみようという気軽な気持ちで入ったので。民泊をやってみて実際どうだったかというとやっぱり楽しいですね。オープンが一昨年の10月だったんですね。最初はまず地域の人に来てもらって、実際に泊まりは知り合いから始まって徐々に関東圏から知らない方も増えてきて、雪が降った12月1月なんかは海外の方も来てくれて。海外からのお客さんは、私がそんなに英語が上手ではないので片言の英語で、それが伝わるのがすごく楽しくてもうワクワク しかなかったです。

ただ、いまだにタイミングが難しいです。このお茶を出して入って行った方がいいのかとか、逆に家族とかの時間を邪魔しない方がいいのかという塩梅がわからなくて、そこはいまだに「入ろうかな、でもやめておこうかな」みたいな。そういう感じはありますね。

夜なんかもお客さんが楽しくしているから自分も入りたいし、一緒にお酒でも飲もうかなと思うけど、海外の方の時は特にそういう感情を流暢に英語で出せないので、そこはすごく悩みましたね。緊張と不安と、でも話したいというワクワクもあったりして。慣れていけば何てこともないんだと思いますが、現段階ではそういうことはありますね。

ウジイ:ここの運営は何人でやっているんですか?

大山:完全に一人です。食事は基本的に出さないので。持ち込み自由なので そのぶん食事は出しません。近所の方から農作物とか自分が手伝いに行っている野菜とか頂くのでそれも置いておいて自由に食べて下さいというフリースタイルでやってます。自分たちでここで調理もできるようになっています。冷蔵庫も使っていいし電子レンジとかガスとかも自由に使ってくださいと。もし宴会とかしたいんだったら、事前に言ってもらえればこの作業室として使っているスペースも片付けて広くしますし。完全に一人なんですけどそんなに苦じゃないですね。

元々母の実家も旅館だったのでおもてなしが好きだったんですよね。民泊は興味なかったんですけど、おもてなしは好きだったのでそれの延長として考えています。七宝の工房がメインの宿泊施設なので、ちょっと散らかっているところは目をつぶってねっという感じで。 

今長期で滞在している人がいて、元々協力隊つながりで知り合った人なんですね。もともと東根の協力隊の人が農業でさくらんぼとかりんご農家をやってるんですけど、その人の手伝いできた人なんです。最初6月ぐらいから2ヶ月ぐらい東根に住んでたんです。その時、私の所にも一人住んでて、みんなで会う機会があった時に、私の所に住んでいる人がもうすぐいなくなるというタイミングでみんなで話をして、じゃあ今度は自分がそこに住みたいって。名古屋から来てる人で、山形を知りたいというのが元々あって、メインは農作物をパソコンで売るような仕事なんですけど、それ以外にも農作物の手伝いもしたいし、やっぱり名古屋とは全然文化が違うので知りたいというので。もう一つ面白かったのがその人が彫金ができるんですよ。じゃあ私と一緒に仕事ができるということで、彫金で七宝のベースを作ってもらってるんです。同じ作家としても一緒にコラボして色んなものを作っています。それは本当にたまたまで。面白い縁ですね。

 

ウジイ:最後にここの PR をお願いします。

大山:意外とまだまだ皆さんに知られていないので、隠れ家的な雰囲気というのがひとつあります。田んぼに囲まれているので、県内の人もそうですが、今コロナで難しいんですけどできれば関東とか関西とか海外とかからも来てほしいですね。碁点温泉も近いので、ちょっと自転車とかでお風呂に入りに行ったり、そういう非日常を楽しむようなこともできる施設です。

すごく静かなんですよここは。6月とかは窓から蛍が見えるんです。そこに川が流れてて川の音が聞こえたりていうような、とっても静かな自然あふれるところで、七宝に没頭できる場所です。基本的には七宝焼って大人数では教えられなくて、じっくり一人対一人とかグループとかで教えるので。本当にその人たちに向けて完全にマンツーマンで教えられるので、自分が納得いくまで作品ができるのではないかなというのがここのウリだと思っています。ここに体験できて今度は泊まりに来ると言ってくれる方もちょこちょこいらっしゃいますよ。まずはここで七宝というものに触れてみてその楽しさを知ってもらえる場所というのが非常に大きいかなと思っています。最初はアクセサリーとか小さいもの、だんだんと大きい作品にチャレンジしてもらう。春夏秋冬を作りたいのでということで来てくれている方もいます。何か作りたいというものがあればこっちは全面的に協力したいなと思っています。作りたいものに対して本当に100%全力を注いでこっちは教えるので、プライベートで納得いくまで、なんなら寝ないで私が教えます。そういう楽しさっていうのを知ってもらえる場所じゃないかなと思っています。 

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