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ウジイユタカ

【ユタカの部屋 第52回 奥山高由(おくやま たかよし)氏】

【インタビュー】居合道発祥の聖地・林崎居合神社へ──宮司・奥山高由氏に聞く「武道の神様」と神職の世界

山形県村山市林崎に鎮座する「林崎居合神社(熊野居合両神神社)」。ここは居合道の始祖・林崎甚助重信公を祀り、全国の武道家から「聖地」として仰がれる日本で唯一の神社です。

今回は、同神社の宮司を務める奥山高由(おくやま たかよし)氏にインタビュー。普段なかなか知ることのできない神職の資格や階級のお話から、神社の由緒、そして居合道の歴史まで、たっぷりとお話を伺いました。

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1. 知られざる「神職の資格と階級」の世界

 

── まずは自己紹介を兼ねて、お名前と現在のお仕事について教えてください。

奥山高由氏(以下、奥山): 奥山高由(おくやま たかよし)と申します。

私はここ、村山市林崎にある「熊野居合両神社」の本務宮司(ほんむぐうじ)を務めております。ただ、この近くは神職が少ないものですから、兼務として周辺の袖崎地区、湯沢地区、西郷地区、河島地区などの神社の宮司も兼ねています。

── 宮司になるためには、国家資格や免許のような制度があるのでしょうか?

奥山: はい、資格制度になっています。取得の方法はいろいろあるのですが、私の場合は國學院大學の講習会(一ヶ月半ほどに及ぶ研修)を受講しました。そこで試験を受けて最初の階級を取得し、神主として色々なお祭りができる資格を有するようになります。

その後も経験を積み重ね、宮司になるための資格を得るために、もう一度國學院大學で研修を受けて筆記試験や実務試験に合格し、さらに山形県内での研修を経て申請を行うことで、初めて「宮司」の資格を得ることができました。

── 神職の方々には「階級」があるのですね。

奥山: あります。下から「直階(ちょっかい)」「権正階(ごんせいかい)」「正階(せいかい)」「明階(めいかい)」、そして一番上が「浄階(じょうかい)」という段階に分されています。

実は、一番下の「直階」のままでは宮司になる資格はありません。ですので、最低でもその上の階級を取り、様々な講習や研修を受けながらステップアップしていく形になります。

── 村山市内、あるいは山形県内にはどれくらいの宮司さんがいらっしゃるのですか?

奥山: 村山市内の神職全体の名簿を見ますと、宮司になっていない方も含めて30名弱(20数名)ほど在籍しています。しかし、その中で実際に「宮司」の資格を持っているのは12〜13名ほどで、全体の半分以下ですね。

── 「宮司の資格」の有無で、できることにどのような違いが出るのでしょうか?

奥山: 基本的にはどのお祭りも執り行うことができますが、一番大きな違いは「装束(しょうぞく)」、つまり着るものにあります。

階級のほかに「級」というものもあり、「◯◯階の◯級」という基準によって、着てよい袴(はかま)の色が変わるんです。上の級になると、紫色の袴や、さらに紋が入った袴が着られるようになります。また、大きなお祭りでは、頭に被る烏帽子(えぼし)や冠(かんむり)の制約も出てきます。お祭りの規模が大きくなればなるほど、相応の階級を持つ神職にお願いする形になりますね。

── 神社界の「組織」の仕組みについても教えていただけますか?

奥山: 仏教の宗派とは違って、神社界の組織(神社本庁)は基本的に一つにまとまっています。その下に都道府県ごとの「神社庁(山形県神社庁)」があり、さらにその下に各地域の「支部」が枝分かれしています。

ここは「北村山支部」に属しており、この組織単位での総会や研修、教化活動などの動きが大きいです。

熊野居合両神社宮司 奥山高由氏

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2. 居合神社は、なぜ「日本一社」と呼ばれるのか?

 

── ここからは居合神社について伺います。この神社はいつ頃、どのようにして建てられたのでしょうか?

奥山: もともとは昔、それぞれの村にお稲荷さんなどの神社があり、地域の人々が崇拝する流れがありました。この林崎の地にも神社があったのですが、その始まりは西暦1072年頃と言われています。

東根市と村山市にまたがる名峰「甑岳(こしきだけ)」の中腹にある大平山から、熊野権現の御分霊(わけみたま)をお分けいただいて、この地に祀ったのが最初です。

その後、明治時代になってから、居合の神様(林崎甚助重信公)を合わせて合祀する形となり、現在の「熊野居合両神社」となりました。居合の神様を祀る神社としては日本でここ一つしかないため、「日本一社(にほんいっしゃ)」と呼ばれています。

国道13号線から見える赤い大きな鳥居が目印

堂々としたたたずまいの境内 左手には居合の資料館も建てられています

たくさんの「のぼり旗」も奉納されています。

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3. 5歳で父を暗殺され、20歳で本懐を遂げた始祖・林崎甚助重信公

 

── 居合道の始祖である「林崎甚助重信(はやしざき じんすけ しげのぶ)公」とは、どのような人物だったのでしょうか。

奥山: 幼名は浅野民治丸(あさのたみじまる)といい、父、母、本人の3人家族でした。しかし、彼がわずか5歳の時に、お父さんが暗殺(殺害)されてしまうという悲劇に見舞われます。

その後、13歳から15歳の頃に抜刀術(ばっとうじゅつ)を習い始め、お父さんの仇を討つために、神社の神様に祈りを捧げながら剣術を猛烈に磨いていきました。

── この林崎の地で技を磨かれたのですね。

奥山: そうです。この神社に毎日お参りしながら、ひたすら抜刀術を磨いていきました。そして彼が10代後半の時、神社に伝わる絵にも描かれているように、神様から「秘伝の奥義」を授かったとされています。

その技をさらに磨き上げ、20歳の時に京都で見事、お父さんの仇討ち(本懐)を遂げたと言い伝えられています。

── そこからどのようにして「居合道」が日本全国に広まったのですか?

奥山: 仇討ちを遂げてこの地に戻った後、まだご存命だったお母様が亡くなられてから、彼は「旅打ち(武者修行の旅)」に出ました。全国各地を巡りながら、自らの居合の技を広めていったと言われています。

この林崎の地だけで弟子を育てたのではなく、全国を旅する中で教えていった人々の中に、のちの大弟子となるような優れた剣士たちが生まれていったようです。

── 現在、居合道にはたくさんの流派がありますよね。

奥山: はい。昔は200以上の流派があったと言われていますが、現在は15〜16の流派に収まっています。

毎年秋には、当神社で「奉納演武会」が開催されます。全国から8〜9つの流派の皆さんがこの地に一堂に会し、それぞれの流派の違いを披露してくださるのですが、宗家や師範の方々が地域に根ざしながら生み出してきた技の違いを見るのは、私自身、居合はやりませんが、客観的に見ていて非常に面白く、興味深いものです。

神社社殿内に鎮座されている、林崎甚助重信公

 

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4. 剣士たちが集う、居合神社の年間行事

 

── 神社の年間の行事やお祭りについて教えてください。

奥山: 一般的な大きな神社に比べると、実はうちのお祭りの数はそれほど多くありません。

まずお正月には、前年の12月30日から1月1日にかけて「歳旦祭(さいたんさい)」を行います。そして、当神社で一番大きなお祭りとなるのが、4月29日の「春の例大祭」です。

── 毎月行われている神事もあるのでしょうか?

奥山: はい、毎月第3土曜日には「月次祭(つきなみさい)」として、「居合抜刀神事」を行っています。

また、5月の後半には「全日本居合道連盟」の宗家による「居合道継承奉告祭」が行われます。現在は第23代と第24代の宗家がいらっしゃいますが、岐阜県や大阪府といった遠方からわざわざこの林崎に足を運ばれ、奉告祭を行うのが通例となっています。ほかにも「さくらんぼ大会」に伴う演武や、各団体の周年記念の報告祭など、年に3〜4回は全国から剣士たちが集まる神事があります。

一般的な「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」で茅の輪(ちのわ)をくぐるような厄払いは当神社では行っていませんが、全国の剣士の皆さんが来られて、それに伴う「奉納祈願祭」を数多く執り行っているのが、この神社ならではの特徴ですね。

この日は新車のご祈祷でした

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5. 勝負事から家内安全まで──参拝とご祈祷のご案内

 

── 最後に、この記事を読んでいる方へ向けて、メッセージと参拝のご案内をお願いします。

奥山: 熊野居合両神神社は、居合道発祥の地として、始祖・林崎甚助重信公(居合の神様)を祀る日本で唯一の神社です。

場所はバイパス沿いからも大きな赤い鳥居が見えますので、非常に分かりやすいかと思います。山を登る必要もありませんので、どなたでも気軽に参拝していただけます。

居合の始祖を祀る神社ということで、古くから「勝負の神様」として信仰されてきました。スポーツや仕事、受験などの勝負事は問わず、家内安全など様々なご願い事に対しても広くご利益があるとされていますので、ぜひお気軽に参拝にお越しください。

── ご祈祷をお願いしたい場合の申し込み方法を教えてください。

奥山: ご祈祷の窓口は、基本的には私の自宅の電話になります。神事の事前準備などもありますので、必ず事前にご予約(お電話)をいただけると非常に助かります。 皆様のお越しを心よりお待ちしております。

── 本日は貴重なお話をありがとうございました!

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【林崎居合神社(熊野居合両神社) 基本情報】

  • 御祭神: 熊野大神(熊野権現)、林崎甚助重信公(居合の神 / 居合の始祖)
  • ご利益: 勝負運向上、武芸上達、家内安全、諸願成就
  • アクセス: 山形県村山市林崎(バイパス沿い、赤い鳥居が目印)
  • ご祈祷: 要事前予約(0237-53-2209 お電話にてお問い合わせください)
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